こんにちは。えたばりゅです。
今回はかつて水田の代表的な昆虫として親しまれていたゲンゴロウという昆虫にスポットを当てて、その中でも最大種であるナミゲンゴロウの魅力をご紹介したいと思います。ナミゲンゴロウといえば、つるんとした固い体が特徴でそのあたりのフォルムもその人気の1つですが、実は幼虫は全然違う姿をしていて、幼虫は何と「Water Devil(水中の悪魔)」の異名があるほど獰猛な性格をしているんです。
そのあたりにも触れながら、早速ナミゲンゴロウの魅力に迫っていきたいと思います。
光沢ある美しい昆虫ナミゲンゴロウ その幼虫は超荒ぶる共食いどんとこいな捕食者だった
ナミゲンゴロウはコウチュウ目ゲンゴロウ科に属する昆虫で、英名はそんまんまで、Diving beetles(ゲンゴロウって意味ではなくて、潜水する甲虫という事でw)、学名は Cybister japonicus といいます。ゲンゴロウの仲間はこのナミゲンゴロウの他にも仲間が存在しますが、そのゲンゴロウの仲間では代表的な存在であり、単にゲンゴロウと呼称した場合はこのナミゲンゴロウを指すことが多いです。体長は約3cm~4cm。気温の変化にも順応性があり、北海道から沖縄の一部で生息が確認されております。またその生息地は日本だけにとどまらず、シベリアや中国、台湾などにも生息しています。
食性は肉食で小魚やエビなどを食べており、嗅覚が非常に優秀で魚などの匂いを察知すると遠くからでもその匂いの下に集まってきます。
そして、ナミゲンゴロウの成虫は積極的に獲物を襲う捕食者というよりは、死亡している魚やカエルなどを食べる屍肉食傾向が強い昆虫で、その地域の水質維持にも一役買ってくれているありがたい存在なんです。
水中のトラの異名を持つ、超獰猛なナミゲンゴロウの幼虫
上記の通り、ナミゲンゴロウの成虫に関していえば、積極的に獲物を襲う事は稀ではありますが、その幼虫は全然違う性格をしておりましてですね。幼虫の頃は前に通るもので、自分よりも小さければ、それがたとえ、同属であっても超積極的に捕食を仕掛けるかなり獰猛な性格をしているんです。
水中でじっと待ち伏せをして、獲物が前を通りかかると、その鋭い大アゴでガッチリ抑え込んで、麻痺性の毒と消化液を相手の体に注入して、どろどろに溶かしてからそれを摂取します。いわゆる体外消化ですが、タガメとよく似ている摂取方法ですよね。
今まで人が咬まれて、その毒により死亡するといったことは起きていませんが、咬まれると結構な痛みを伴い(毒と一緒に消化液も注入されるため)、酷ければ患部の壊死などがあり、場合によっては入院が必要な事例もありますので、幼虫を見つけても不用心に触ったりしない方が賢明かと思われます。
こちら、そのナミゲンゴロウの幼虫が金魚を捕食する姿の動画をアップされておられたので、ご紹介しておきます。
成虫と全然似てないでしょ。実はナミゲンゴロウはじめ、ゲンゴロウ類は完全変態を遂げる昆虫なので、幼虫の姿と成虫の姿は全然違う姿をしているんですね。
ムカデに似た姿で超攻撃的な性格なんで、日本では水ムカデなんて呼ばれ方もしていて、英語圏ではその攻撃的な性格にちなんで、「Water Devil(ウオーター・デビル)」や「Water Tiger(ウオーター・タイガー)」なんていう風にも呼ばれています。
このように幼虫にはとても勇ましい別名があるんですが、そもそもゲンゴロウっていう名前、なんでこんな人のような名前になったんでしょうか。この辺りはちょっと気になりますよね。
ゲンゴロウのその名前の由来
ゲンゴロウは漢字で書くと源五郎と書くのですが、この辺りにその由来の答えがあるという説もあるんですね。
昔々ある所に、源五郎という超欲張りの男が暮らしており、その男があるものを手に入れました。それが何かというと・・・
なんと振る度に小判が出てくるという小槌。
なんて羨ましいものを手に入れたんだ。という感じですよね。しかしながら、この小槌。意外と曲者で振る度に小判が出てくるのですが、その代わりに小槌を振る度に身長が少しずつ縮んでしまうといったもの。普通ならば、怖くてこういったシロモノには手を出さないのが定石ではございますが、その辺りはさすが超欲張りな源五郎さん。どんどん、どんどん小槌を振り続け・・・最後には小さくなりすぎて虫になってしまいました。そして、このゲンゴロウ虫が後のゲンゴロウになった。と言われております。
しかしながら、言うまでもないですが、そのような魔性の小槌は存在しませんし、人が昆虫になることも決してありません。おそらく、欲張ってはいけないという戒めの話が伝承化したものだと思うのですが、こういったいわれがあるのもゲンゴロウの魅力の一つかなと思います。
実際のところ、その名前の由来は・・・よくわかっていないんです。スイマセン。
近い将来いなくなるかもしれないナミゲンゴロウ
一見生息地が幅広いので、ものすごく生命力にあふれ、いたるところにゲンゴロウがいる印象を受けてしまいがちですが、その生息数は非常に限定的。日本では東北地方など、まだ個体数が比較的マシな地域もありますが、東京都、千葉県、神奈川県、滋賀県、鹿児島県ではすでに絶滅してしまった他、中日本から西側では残念ながら危機的状況が続いているんですね。
しかしながら、昔から数が少なかったのではなく、以前はタガメと同じく、水田を代表する水棲昆虫として親しまれてきました。数が減ってしまった主な原因としては、ブラックバスなどの外来種の脅威。強毒性の農薬の散布。水田や畔の埋め立てなどの生息地の破壊などが挙げられます。またそのフォルムの美しさからペットとしての需要が高まり、ペット業者はもちろん、一般の人までもがこぞって採集してしまったためとされています。現に私が小学生の頃には水田に住む身近な昆虫として教科書に載っていたのを覚えています。
環境省では国レベルで現在ナミゲンゴロウをVU(絶滅危惧 Ⅱ類)にランクしています。
このように、少し前まで普通に見られた存在が、今や風前の灯火というのは本当にさみしい限り。
最後に
いかがだったでしょうか。少し前までは至る所にいたであろうゲンゴロウ。ナミゲンゴロウのみならず、ゲンゴロウの仲間たちは相対的にその数を大幅に減らしています。私の生息地域である兵庫でも絶滅したとされていた亜種であるコガタノゲンゴロウが一匹発見されるなど喜ばしいニュースもありますが、裏を返せば発見でニュースになるような深刻な状況といえます。
また、田んぼや畔をみれば、普通に姿を見かけることが出来る位には生息数の回復を図らなければならないと思う次第でございます。ゲンゴロウの成虫のように、水質を浄化してくれる生き物たちの存在は非常に貴重。タガメやゲンゴロウがまた田んぼを代表する昆虫として教科書に載ることを目標としなければですね。ではでは、今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。