こんにちは。えたばりゅです。
今回は、フィッシャーという動物にスポットを当てていきたいと思います。あまり馴染みのない名前の動物なんですが、実はほとんどの捕食者が手を焼いて捕食を諦めてしまう、あのヤマアラシをも捕食する数少ない捕食動物の1種で、非常に優れた狩りの手法を持っている動物なんですね。
今回はそのあたりも踏まえつつ、フィッシャーの魅力に迫っていきたいと思います。
フィッシャー あのヤマアラシも捕食してしまう超凄腕捕食者の意外な事実とは!?
まず、フィッシャーの紹介を軽くさせていただくと、英名は和名と同じく「Fisher」、学名は「Martes pennanti」、もしくは「Pekania pennanti」という、イタチ科に属する哺乳類の仲間で、学名が示している通り、テン属(Martes)に属するか、「Pekania」属として、独立した種に分類するか議論がされている種でもあるんですね。
テンというと、日本のホンドテンくらいの30cmほどの大きさをイメージしますが、フィッシャーはそれよりも大型で、特にオスはメスよりも大型な傾向があり、その全長は約1mを超える個体も多くいて、最大個体としては体重が10kgに迫るような、大きな個体も発見されております。
生息地域としては、アメリカ北部から、カナダにかけての森林地帯が主な生息地域となっていて、その中でも河岸地帯を有する森林を好んで生活の場としております。陸上生活をメインにしているものの、木登りにも秀でており、ノウサギや昆虫類の他、鳥類やアメリカヤマアラシなどを捕食するほか、木の実や果物、キノコなど、比較的幅広い食性を持っているものの、普段は主にノウサギやアメリカヤマアラシを主に食べております。
可愛いお顔してるでしょ。実はこのようなかわいい顔に似合わず、性格は結構勇猛で、時にはボブキャットやオオヤマネコも打ち負かすことがあるんです。
フィッシャーはどうやってアメリカヤマアラシの鉄壁の防御を崩すのか
それにしても、あのヤマアラシを捕食できるってのは凄いですよね。ヤマアラシはご存知の通り、全身針山といっても過言ではないほどの鉄壁の防御方法を持った動物。ヤマアラシの針が刺さると、その傷が元で狩りができなくなったり、針の傷が元で感染症にかかり、命を落としてしまう危険があるため、ライオンやクマといったその地の頂点捕食動物ですら、敬遠する動物。
他に獲物がいなくて、やむにやまれぬ状況に陥って、っていうならまだわかるのですが、そんな動物をどうやってフィッシャーは「主な獲物」として、捕食しているんでしょうか。
これはマングースが毒蛇を仕留めるその手法に通づるものがありまして、マングースが毒蛇を仕留めるときは、その素早い動きで毒蛇の毒牙攻撃を巧みに避けながら、その急所である頭を巧みに狙うんですが、フィッシャーもヤマアラシを狙う時は頭を集中的に狙うんです。
全身が針山のようになっているヤマアラシですが、実は頭部と腹部は普通の体毛が生えており、針の様にはなっていないんです。ただ、針だらけの体から腹部を狙うというのは、やはりアメリカヤマアラシも必死で抵抗するので、なかなか難しいんですね。なので、フィッシャーはその素早い動きで、頭へのヒットアンドアウェイを繰り返し、アメリカヤマアラシが弱ったところを仕留めるというわけなんです。
ライオンやクマ、トラといった頂点捕食者ですら、敬遠するような相手を巧みな技と身のこなしで見事に捕食するあたり、捕食者としては素晴らしすぎる実力が備わってるといえますよね。
ちなみに、ピューマもヤマアラシを仕留めることができる数少ない捕食者の1つで、ピューマがヤマアラシを狩る時は、頭ではなく腹部を狙うことが分かっております。
フィッシャーがフィッシャー(Fisher)と呼ばれる理由
フィッシャーがヤマアラシですら、食べてしまう凄腕の捕食者っていうことは分かったんですが、でもどうも腑に落ちないのが、やっぱその名前ですよね。ヤマアラシの他にフィッシャーは以前ご紹介したスナドリネコ(Fish Cat)のごとく、魚を獲るための実力を兼ね備えているんでしょうか。
いやいや。実はフィッシャーはヤマアラシやウサギといった陸生動物を主食としていて、魚はめったに食べることはないんです。
じゃあ、なんでそんな縁もゆかりもほぼないような、お門違いの名前がついてしまったのでしょうか。
これには、ある語源が由来となっているんです。
実は、フィッシャーという名前はフィッチ(Fitch)という言葉が関係していて、フィッチはヨーロッパケナガイタチというイタチの仲間、もしくはその毛皮を指す現地の言葉なのですが、ヨーロッパケナガイタチとフィッシャーはその姿がよく似ていて、この事から、フィッチ(Fitch)が段々とフィッシャーに変化していき、現在はフィッシャーと呼ばれるようになったと考えられているんですね。フィッシャー(fisher:漁師の旧語)というと、いかにも魚に深い関係がありそうな名前ですが、その実態はこういった意外な理由が背景にあったんですね。
ちなみにヨーロッパケナガイタチはその名の通り、ヨーロッパ地方に生息するイタチ科の仲間で、あのフェレットの祖となった種とも考えられております。
このような名前なので、現地ではスナドリネコ(Fish Cat)と混同されることもたまにあるんだとか。確かに、これは間違えても仕方ないネーミングですよね。日本でもスナドリネコの名前の由来を知っていて、フィッシャーという動物の名前を聞いたら、スナドリネコの別名と思ってしまう気がしますw
最後に
いかがだったでしょう。今回は、フィッシャーという、ヤマアラシすら捕食する凄腕の捕食者で、ちょっと紛らわしい名前を持つ動物の魅力に迫ってみました。このような魅力あふれる有能なハンターなのですが、実は過去にはその毛皮の為著しく乱獲されて、絶滅しかかった暗い過去もあるんです。
現在は、毛皮の価値が下がったことと、フィッシャーの保護対策により、幾ばくかはその数は持ち直し、IUCN(国際自然保護連合)の評価ランクでもLC(軽度懸念)と評価されるまでなりましたが、毛皮目的による狩猟は依然行われていて、まだまだ安心はできない状況が続いておりますので、この調子でフィッシャーの保全を絶賛応援していかねばですね。
ではでは、今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
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