こんにちは。えたばりゅです。
今回は、古来より日本の田んぼを支配する田んぼの王者にして、日本における水生昆虫では間違いなく最強候補であるタガメにスポットを当てて、その王者っぷりをネップリと、タップリとご紹介しつつ、その魅力に迫っていきたいと思います。
タガメが水田の王者と呼ばれるその所以とは・・・
ではでは、今回も最後までお付き合いいただけましたらと思います。
タガメ マムシすら捕食するその攻撃性は吸血鬼が優しく感じてしまう
まず、タガメのご紹介を軽くさせていただくと、英名を、 Giant water bug(ジャイアント ウォーター バグ)」 。学名は、 「Kirkaldyia deyrolli(キルカルデュア デユロッリ)」といいう、カメムシ目(半翅目)コオイムシ科に属する水棲昆虫の仲間で、体長は約6cmですが、横幅もあるので、実際の体長よりは結構大きく見えたりしますね。
日本や朝鮮半島、ロシアなどに生息しており、水棲昆虫ではあるものの、泳ぎはそんなに得意ではないため、水田やその用水路の水のたまり場、池の浅い場所などを好んで生活の場としているんですね。
またタガメは、変わった呼吸法を持っていて、口ではなくて、呼吸はお尻を使って呼吸しています。水中では獲物を探すために水面と逆方向を向いていることが多く、呼吸はもっぱらお尻にある、呼吸間から空気中の酸素を取り込んで、呼吸しております。
古来より水田の王者として君臨してきたタガメ
やはりタガメの姿を見て最初に目につくのは、このカマキリのような鎌状に変化した前脚が醸し出す、いかにも捕食者らしい姿ではないでしょうか。この見た目の通り、タガメは絶賛肉食。
タガメは典型的な待ち伏せ型ハンターで、水草などにじっと捕まりながら息を殺して獲物が射程距離に入ってくるのを待って、獲物が射程距離に入ったら、恐ろしいほどの瞬発力で襲い掛かり、この鎌のような立派な前脚で獲物を捕らえ、動かないようにがっちり固定して、捕食するんですね。
世界的にみるとアメリカ大陸、アジア、アフリカ大陸とその亜種が世界各地に住んでいます。
日本のタガメの大きさは、約5~6cmほどとタガメという種類でみると、中型ほどの大きさと言えそうです。(最大種は南米に生息するナンベイオオタガメ。その体長は10cmを超えることもあります。)
ただ、画像を見る限り、大鎌のような前脚はあるものの、オオスズメバチやオオカマキリのような、強靭な大アゴが見当たらないですよね。実は、タガメの口は針状になっていて、それを使って獲物を捕食するんです。針状の口で何かを摂取するというと、蚊のように体液を吸うイメージがありますが、実はタガメの食事はそんなに生易しいものではないんです。
ヴァンパイアが優しく思えてしまう程の、徹底的なタガメの吸いっぷり
蚊のようにひっそりと気付かれることなく、相手の血液や体液を摂取するということであれば、アレなんですが、タガメの食事はそれよりももっと強烈で、文字通り全てを吸い尽くすんです。
まず、相手が逃げないようにその強靭な前脚でガッチリ相手を抑え込んで、針状の口を相手に突き刺すんですね。そして、その口から先ずは獲物の体内へと、消化液を注入するんですが、その消化液が強力極まりなくてですね。なんと、相手の筋肉や脂肪はもちろんのこと、小さな脊椎動物であれば、その骨までドロドロにしてしまう程。
なので、大きな獲物も数分で動けなくなってしまい、そして、その溶けた肉や骨を吸い上げて美味しくいただいているというわけです。こういった食物の摂取方法を体外消化っていうんですが、タガメの他、ミズカマキリやタイコウチ、アリジゴクやクモなどが同じく体外消化を行うことで知られています。
このような捕食方法なので、タガメは自分よりもかなり大きな獲物にも襲い掛かることで知られていて、小魚やカエル、カメ、オタマジャクシなどはもちろん、自分の5倍はある魚やあのマムシにも襲い掛かったりするんです。
こちら、タガメがトノサマガエルかな・・・に襲い掛かるさまを捕えた動画。
動画には肉食動物の捕食シーンが含まれています。苦手な方は閲覧の際、十分ご注意ください。
いや~・・・なんていうか、こういうシーンを見ると、自然界は本当に厳しい世界だと実感します。
このようにタガメは非常に高い攻撃性を備えていて、目の前を通る獲物には物おじせずに襲い掛かるさまから、古来より水田の王者として、水田の食物連鎖の上位に君臨してきました。
ただ、天敵がいないかというと、そういうわけではなくて、やはりサギなどの鳥類が相手となると、さすがのタガメも敵わなくて捕食されてしまうんですね。また、帰化種として現在日本に生息している、ウシガエルやブラックバス、ブルーギルといった種にも捕食されてしまっております。
ちなみに、このタガメという名前の由来なのですが、田んぼに住むカメムシだから。もしくは、カメの甲羅のような模様を持っているから。とされていますが、はっきりとしたことは分かっていません。
世界に分布する種としての成功者タガメ
タガメはこういった捕食者としての地位や、そのカッコいいフォルムから日本でも人気があり、かなりよく知られている昆虫の1つといえますが、実は亜種を含めると、東南アジアはもちろん、アメリカ大陸やアフリカ大陸など、世界中に生息しているんですね。
世界に広く生息しているということは、裏を返せば、タガメの種としての生存能力が優れているということであり、そういった意味では有能な成功者ということができそうですね。
そんなタガメの仲間の中で、最大種はナンベイオオタガメという、ブラジルやキューバに生息しているタガメで、その体長は10cmを超えることもあり、重量感たっぷりのタガメの仲間の中でも、一際その巨体が目立つタガメといえます。ただ、体は日本のタガメよりも大きいですが、その武器となる前脚は小さいので、日本のタガメのように大きな獲物を襲うということはあまりないようですね。
このように種としての成功を収めたタガメですが、現在は残念ながら、絶滅が心配されているんですね。
絶滅が心配される日本のタガメ
少し前までは、水田の代表的な昆虫として、親しまれてきたタガメですが、現在では非常に絶滅が心配されているんですね。
実はタガメは、日本のほとんどで絶滅危惧Ⅰ種二指定されており、石川県、長野県、神奈川県、東京都においては、すでに絶滅してしまったとされており日本全体として、環境省が定めているレッドデータではタガメはVU(絶滅危惧 Ⅱ類)に分類されています。
ゲンゴロウもそうですが、日本を代表するような水生昆虫たちが現在軒並み致命的なダメージを負いつつある原因には、都市化が進み、水田などタガメやゲンゴロウが過ごしてきた環境が急激に失われつつあることと、農薬に対する耐性が低く、農薬の散布によってかなり深刻なダメージを負っていることが背景にあるんですね。
また、タガメは活発に移動するような種ではないため、タガメが生息していることに気付かず、生息地が開発されてしまったりなど、タガメの習性が裏目に出てしまうケースもあります。
また、先ほど申し上げた通り、近年では帰化種によるタガメの捕食例もあって、生息数の減少に拍車をかけてしまっているんです。こういった状況を打破するためには、やはりタガメの保護はもちろん、その生息地や環境の保全も必須条件ということは間違いないといえます。
最後に
いかがだったでしょうか。いかにギャングとはいえ、タガメもその生態系を支えるというところでは、本当に重要な役割を担っている生き物といえます。また、タガメは水質が汚れている環境では暮らすことが出来ないので、タガメがいる=その場所の水質が優れているという指標にもなる生き物です。
ぜひとも各田んぼや、水路、池などにタガメを呼び戻し、生き物に優しい環境を再構築していきたいものですね。タガメたちが再び、水路などで普通に見かけるようになることを願うばかりです。
ではでは、今回も最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます。