こんにちは。えたばりゅです。
今回は北国が誇る小さなファイター、クズリにスポットを当ててその魅力をご紹介したいと思います。ヒグマやオオカミ、トラにヒョウ、ピューマといった強力な捕食者が数多ひしめく北方地域で、体長1m足らずの小さな体ながら、これらの捕食者と、ほぼ同列な立ち位置にいるその実力のヒミツとはなんなのか。
ではでは、今回も最後までお付き合いいただけましたらと思います。
クズリ 小っちゃい体で大きな獲物を捕食する小さなファイターの戦法とは!?
では、まずクズリのご紹介を軽くさせていただくと、英名を「Wolverine」、学名を「Gulo gulo」という、食肉目(ネコ目)イタチ科クズリ属に属する哺乳類の仲間で、アメリカ合衆国北部、カナダ、アラスカからロシア、モンゴル、フィンランドなどといったユーラシア大陸北部にかけて幅広く生息しております。
「Wolverine(ウルヴァリン)」という英名は、やっぱりあのアメリカコミックが元となった大ヒット映画で一躍有名になったのではないでしょうか。クズリという動物は以前から結構認知度はあったりしましたが、ウルヴァリンが実はクズリの英名だってことは、あの映画がきっかけで知った方も多いと思います。
日本では、クズリはクロアナグマっていう別名もありますが、英名でも別名があってそのイメージから、「Glutton(大喰らい)」なんていう別名もあったりするんですね。一度に食べる量としては、そんなにとんでもなく食べるっていうことはないものの、クズリは結構食べ物を獲得するためには危険をいとわないところもあって、ヒグマから獲物を横取りしたりすることもあるんです。
もちろん返り討ちに遭うと命の危険もある相手なので、その頻度は低いですが、あのヒグマから獲物を横取りするとはオドロキですよね。ヒグマから獲物を横取りできるような動物はそうそういないですし、ヒグマが獲物を譲るとなると、クズリの体格もかなり大きいようなイメージを抱いてしまいがちですが、クズリの体長は約1mたらず。体重も約15kg前後、最大クラスで約30kgと、最大クラスのクズリでもその体重はヒグマの10分の1ほど。
このように明らかに体格差のある相手から、単独で獲物を奪い取る辺り、クズリの発するとんでもない迫力が伺い知れますよね。
そのような性格なので、クズリは木の実や果実も食べるものの、獲物を狩る捕食動物でもあり、ウサギやネズミなどの小型哺乳類はもちろん、時にはトナカイ(カリブー)のような自分の数十倍あるような大きな動物も獲物とすることがあります。
この他、動物の死骸も選り好みせず食べるなど、生存能力にも秀でた動物といえます。この辺りも「大喰らい」という別名がついた所以かもしれませんね。
クズリはどうやってトナカイやシカを仕留めるのか
それにしても、ウサギやネズミなどは分かるのですが、クズリはどうやって自分よりも何倍も巨大な大きな獲物であるトナカイを捕食するのでしょうか。私たち人間に置き換えてみれば、素手でアメリカバイソンに挑むようなものなの。
・・・いや、勝てないでしょコレは。やはりクズリがトナカイを獲物にするっていうのは無理があるように思えます。
では、クズリはどうやってシカやトナカイのような大きな獲物を狩るのか、オオカミやライオンが自分よりも数倍大きな相手に挑むときのように群れのチカラを使うのでしょうか。いや、クズリは基本的に単独生活を好む動物で、個々の縄張り意識も非常に強く、群れで協力して狩りをする習性はありません。
実は、クズリは奇策ともいえる戦法を用いて、自分よりも巨大な獲物を仕留めんるんです。
相手との体格差を埋めるクズリの戦法
実はクズリは、大きな獲物を捕食するときは、相手の脊髄を狙うんです。脊髄であれば、鹿やトナカイの強力な角の反撃に遭う危険性も減りますし、急所ですので、ここを攻撃すれば、より短時間に効率よく、獲物を仕留めることができます。
ただ、問題は、体格差。体重はもちろんなのですが、クズリがイタチ科なので、その体高もトナカイなどのシカの仲間とは比べ物になりません。脊髄を狙うというのも無理があるように思えます。では、この体格差をどのように埋めて、相手の脊髄を狙うのか。
それは、周りの環境を利用するんです。クズリは周りの地形を駆使して、高い岩の上や樹上から獲物の背中に飛び乗って、強靭なあごで相手の脊髄をかみ砕くんです。また、クズリは低い体高ながらも、低い重心、太い脚を駆使して体重を分散させ、深い雪の中をより自由に動けるよう進化しているので、相手よりも優位に行動することができるんです。
こうやってクズリは自分よりも数倍大きく、体格差もある動物を仕留めているんです。まぁ、もちろん相手が大きいということは、それだけ自身に及ぶ危険性も増すため、常時このような大きな獲物を標的にしているわけではございませんが、このようの地の利を最大限に生かすため、クズリがトナカイのような大きな獲物を捕食する頻度は冬場になるほど高まります。
いかがでしょう。クズリがヒグマやピューマ、オオカミといった強力な捕食者と肩を並べているのは、クズリの戦略家としての非常に優れた才能の賜物といえそうですね。
では、クズリに関するトリビアを一つご紹介しておきましょう。
クズリトリビア アメリカのミシガン州(クズリ州)にはクズリは生息していない
アメリカ合衆国50州には、それぞれ正式名称とは別に、ニューヨーク州は「Empire State(帝国の州)」、フロリダ州は「Everglade State(沼地の州)」、ハワイ州は「Aloha State」、などと、各地域の地域性や特産物などが垣間見える愛称がついていて、ミシガン州は「Great Lakes State(五大湖の州)」などの他、「Wolverine State(ウルヴァリンの州)」という愛称がつけられているんです。
いかにも、ミシガン州にはクズリが沢山生息していそうな感じがしますが、実はその真逆。ミシガン州にはクズリが生息していないんですよね。
クズリは北方地方での生存に適応している動物ですので、年間を通して寒暖な地域が生息地域になっているんです。なので、冬場はかなり寒さが厳しい傾向があるものの、夏は温暖で30℃を超える日も比較的多くあって、クズリの生息環境にはあまり適していないんです。
では、なんでクズリがミシガン州を表す、愛称として抜擢されたのか。気になるところですが、この理由については、ミシガン州に住んでいる方々がクズリが持っている勇猛さ、強さ、貪欲さを象徴にしてなど、様々な説があるものの、コレ!。といった確固たるものはないようですね。
とはいえ、ライオンやトラ、ワシやタカ、バッファローなどといった、強さや勇猛さで知られる動物たちはよく国やスポーツチームの象徴とされるので、クズリが生息していなくとも、愛称として抜擢されるのも頷ける気がします。
ちょっとニュアンスは違いますが、日本の九州にも、スターくまモンがいますしね。
最後に
いかがだったでしょう。今回は、小さい体ながら、北方に生息する優れた捕食者としてヒグマやオオカミ、ピューマといった強力な捕食者と肩を並べる、クズリをご紹介させいただきました。
体の大きさがモノを言うことが多い自然界で、自分より体の大きな捕食者と肩を並べているクズリはある意味異端の存在ともいえる、超絶魅力的な動物ですよね。自分が持っている身体的特徴を踏まえたうえで、巨大な相手に打ち勝つ戦略を組み立てる。
なんか、舞の海さんや炎鵬関を彷彿とさせる気がするのは私だけではないはず。
ではでは、今回はこの辺りで。今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。